エドゥアルド・フェルナンデス

  マスタークラス 東京GGサロン
日時:2004年7月22日(木)
場所:東京GGサロン 18:00開場 18:30開始
受講曲:アランフェス協奏曲(J.ロドリーゴ)

現代ギター10月号(No.478)にマスタクラスのレポート(小川和隆氏)が掲載されています。

 記録的な暑さの東京。約40度。サウナに行ったのと同じような空気を、逆に心地良いいもんだと感じたのもつかの間。頭がぼーっとしてきた。この暑さが私以上にこたえていたのはフェルナンデスさん。フェルナンデスさんの住むウルグアイは地球の裏側だから現在は冬で、気温はマイナスの日もあるという。一日で気温差40度の国へ飛んで来たことになるんだから、少し元気がなくなっても当たり前だ。しかしレッスンに手抜きがあるはずもなく、相変わらず難しい注文を受講生にぶつけていた。
 受講生は私を含めて3人で、アリエル・アッセルボーン君(アルゼンチン)、金庸太さんといったプロフェッショナルなギタリストたち。当然要求も高度になるわけだ。
  
 フェルナンデスさんと受講生の間で、自ら音楽の中に入り込んで熱のこもった通訳をして下さったのはギタリストの高田元太郎さん。直接英語で先生とやり取りしても良いですよ、と言って下さったのだが、聴講のお客さんも沢山いたので通訳付きのスペイン語でのレッスンが始まった。
 通訳というと、当事者達からちょっと離れた視線で「言ったことだけ」を客観的に伝えるものだと思っていたし、そういった光景しか見たことがなかったが、高田さんの通訳は違っていた。


私のとなりで、私と同じ課題に共に取り組んでいるかのように、いっしょになって歌ったり、リズムをとったりなさっているのだ。私も一層熱が入り、夢中になって弾いていたらあっと言う間に45分がすぎてしまった。素晴らしく集中し充実した時間だった。
 
  

 フェルナンデスさんにお会いするのは2年ぶり。前回の来日のとき私はマスタークラスを聴講していた。今回はアランフェス協奏曲で受講。マスタークラスは45分しかないので、全楽章のレッスンは出来ない。フェルナンデスさんは「音楽的に一番難しい2楽章をやりましょう」とおっしゃったので2楽章のみ弾いた。

 この曲に関して、ロドリーゴの娘さんのセシリア・ロドリーゴさんがコンサートや録音での第2楽章のみの演奏を禁止したことで、福田進一先生とN響との共演の模様が最近放送予定だったのにダメになったことがフェルナンデスさんとの間で話題になった。「じゃあ君も今日は全楽章弾かないとセシリアさんに叱られるかも」と冗談言っていたのだが、冗談じゃなく本当は全部聞いて欲しかった・・。

 フェルナンデスさんを前にして弾くのはかなり緊張していたのだが、始まる前に「うんと厳しいレッスンして下さいね」と言ったところ、「僕は君の演奏が好きです。厳しくする必要なんかないでしょう、心配しなさんな」と言って下さった。 でも、レッスンというのは褒められるために受ける訳ではないので、厳しくされたほうがありがたいのだ。しかし、フェルナンデスさんがかけて下さる温かい言葉によって今までどれほど励まされてきたことか。。スペインのコンクールを受けるきっかけもこの方の言葉だった。ピアノ伴奏なしでのレッスン。弾きはじめると、フェルナンデスさんが2重奏のように音を入れて下さった。その時がもっとも緊張していた。だって、フェルナンデスさんとデュオしているなんて。ああ、このまま時間が止まって欲しい、と思ったことも事実。
 ヴィブラートをもっと上手に沢山使うこと、また、力一杯ひくと音が歪むので、ピアノやオーケストラと共演するからといって、いつもより強く弾く必要はないこと、共演者や指揮者にソリストの意志が伝わるような身体の動きを示さなければならない箇所、重要な音の動きを意識し大きくとらえること、など指摘された。スケールがきまると「パーフェクト」とか「ビューティフル」とか言って下さるので、だんだん気分が盛り上がって来ていつの間にか緊張しているのを忘れていた。
                
   

 私の音がビューティフルなのは楽器によるところがあるだろう。フェルナンデスさんがレッスン前に私の楽器を見て感激していた。この日使用したのはヘルマン・ハウザー1世(〜私の所有物ではないの!!〜)。聴講の方(プロの先生が多かった)からも音がきれいだったという御感想をお寄せ頂いた。 思いがけずうれしかったのは、レッスン後、私を励まし応援して下さる方々にお会いできたこと。この場を借りて、心から感謝を申し上げます。


11月13日に「りとるかりん」でアランフェス弾きますので御来場をお待ちしております!

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