東京滞在レポート
E.フェルナンデス マスタクラス聴講&リサイタル







   エドゥアルド・フェルナンデスの来日の機会に、彼に会うため上京した。
   23日のマスタークラス直前にデジカメを秋葉原で購入し、準備万端!


〔2002年6月23日(日)〕

 エドゥアルド・フェルナンデスのマスタークラスがのGGサロンで行われた。コンクール入賞者や既に演奏家として活動を始めている方が受講生を務めた。通訳はスペイン留学の経験の持ち主、東隆幸さん。無駄のない的確な通訳をして下さり、大変良く理解できた。作品の分析、解釈に重点が置かれ、フェルナンデス自身もギターを抱えてレッスンが進められた。
 私が彼の公開レッスンやプライベートレッスンを受けた時、彼は模範演奏を示してくれなかった。そのかわり、分かりやすい例えを沢山言葉で示してくれた。先生がお手本を示してくれると分りやすい。が、真似が上手な生徒の場合、先生のお手本通りにパッと弾いてみせることができても、自分の家に帰ってみると、どうだったか忘れている、なんてこともあり得る。だから、先生が模範を示さないレッスンの方が、頭に良く入ると思う。
 又、受講生の技術的な問題解決に多くの時間を費やすレッスンよりも、こういった内容の方が公開レッスンとしての役割を果たしているように思った。ひどい場合だと、受講生の爪を時間をかけて削り出す先生もいるのだから!
 ヒナステラのソナタ、ブリテンのノクターナル等自分のレパートリーではない作品を聴講でき、大変勉強になった。受講生の方にも感謝したい。詳しいレポートは現代ギター誌にお任せし、ここでは控えることにする。

 マスタークラス終了後、受講生と通訳者、現代ギター関係者、製作家のK澤氏、自称フェルナンデスファンクラブ会長のM林氏、ちょうど数日後の演奏会の為に来日していたチェコのギタリスト、ブラハさん(アッシャーワルツはこの人に献呈された作品)、アマチュアギターファンの面々、それに福田先生も加わり賑やかな打ち上げとなった。
            皆さんと一緒「皆さんと」

            フェルナンデスと「フェルナンデスと」

 池袋駅方面へ帰る組でタクシーに乗車するはずだったが、福田先生がまだエド先生と話したりないと言って2次会へ誘って下さり、以下の写真のメンバーと編集長で飲み直し。帰りは私がエド先生をタクシーでホテルまで送った。彼は日本のあと、上海、ソウル、マレーシアのクアラルンプールと演奏旅行を続ける予定。いつ練習してるのですか?とタクシーの中で質問してしまった。彼が何と答えたのか考えてみてください。

            飲み直し会
                     「飲み直し会」


〔2002年6月24日(月)〕

 午後7時からトッパンホールでエド先生のリサイタル。渋いプログラムを聴けるとあって、ずっと楽しみにしていた。終演後本人にも聞かれたが、一番気に入った作品はデニソフの「ソナタ」、次がブローウェルの「警句による前奏曲集」である。複雑なソナタで、たった一度聞いただけでは1楽章のソナタ形式を理解できない程だった。
 著名な演奏家にもいろいろなタイプがある。まず、何年間もある程度決まったレパートリーで世界のフェスティバルを周る人。手の内に入った完成度の高い演奏で聴衆を魅了する。何年も弾いているのだから、当たり前と言えば当たり前のように思う。それでも、聴衆が何度でも聞きたいという演奏をしている、ということなのだから素晴らしいことには違いない。一方で、フェルナンデスのように、新しい作品を発掘し紹介することに積極的な演奏家もいる。長年演奏し続けている多大なレパートリーを持っているにも関わらず、開拓者を印象付けることも忘れていない。どちらのタイプも素晴らしい活動だと思う。しかし、譜面を見て新曲を弾く姿を批判する愚かな聴衆がいることも事実であり、悲しいことである。自分は音楽をよくわかっている「つもり」になっている人達の中に、そういう人がたまにいる。

 終演後の打ち上げは、限られた関係者のみ、少人数(8人)でのお食事会で、私はモンテビデオに招待されていることもあって、その中に入れて頂いた。私と共にモンテビデオに呼ばれている村治佳織さんとそのお父様、編集長、社長夫妻など。佳織さんとは初対面ではなかったが、いろいろお話したのはその日が初めてで、楽しいひとときを過ごした。手の大きさを比べたり、楽器のことを話したり、レパートリーのこと、などいろいろ。残念ながら彼女との写真はここに掲載できません。

 人との出会いとは不思議なものだと思う。出会いの輪が広がって、やがて思いもかけないような人間とのめぐり合わせがその輪の向こうに待っている、ということもあるのだから。モンテビデオフェスティバルは、自分が生徒という立場ではなく、演奏家という立場でお会いすることなどあり得ないような、夢のような素晴らしいギタリスト達が招待されている。それまでに、もう少し会話する意欲というか、社交性というものを身につけなくちゃ、大損しちゃう、と実感している。

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